そろそろ本にまつわる2つの大きな誤解について語っておくか
ご無沙汰です。
最近、Amazonのレビューや書評ブログを読んでいて、「あれ? この人、勘違いしてるな」と思うことが多いので、この際だから本にまつわる大きな誤解について語っておきます。
といっても、これまでにも何度かブログに書いてきたことの繰り返しなんだけどね。
読者がしている大きな誤解は2つあります。
1. タイトルは著者が決めている。
読者がしている大きな誤解の1つめがこれ。
著者はタイトルを決められません。正確にいうと「決めさせてもらえない」というのが正しい。
今朝、はてブを見ていて、このエントリーを読みました。
今話題のビジネス書『不格好経営』の書評記事です。俺はこの本を読んでいないので、このブログ主の意見には賛成でも反対でもないんですが、読んでいて1つ気になる点がありました。
それが以下の部分。
まず本のタイトルが、ひどい。
『不格好経営』だ。
繰り返しになるが、マッキンゼーという泣く子も黙る世界最強の外資コンサルタント企業に就職し、そこでパートナーまで上り詰め、挙げ句の果てには自ら事業を興し、野球球団を傘下に抱えるような押しも押されぬ東証一部上場の超大企業までたった数年で育て上げた稀代の企業家、南場智子。その南場智子という1人の人間が見た光景、経営の一線を退き、自らの生き様や経営を振り返り、その哲学や想いを存分にまとめたはじめての著作、その待望の著作の表題が
「不格好経営」である。
勝ち組が「勝った」という事実を認めずに「大した事じゃない」やら「不格好」と言い放つことで、本来「普通」であったはずの人間は負け組に蹴落とされ、元々負け組だった人間はもはやカテゴライズしようのない訳の分からない汚物として存在自体を無視される事になる。
僕のような汚物の零細企業家はどうやってこの燦然たる事実を直視すればいいんだろうか。
こんな残酷なことを平気で言って退ける面の皮の厚さたるや敬服に値する。
まとめると、「タイトルが良くねーだろ」と仰ってるわけです。
この部分は出版社に文句を言っているようにも、著者に向けて文句を言っているようにも、あるいはその両者に対して文句を言っているようにも読めますが、俺は1回目にここを読んだとき、ブログ主は著者である南場さんに対してこの文句を言っているのだと受け取りました。つまり、「ブログ主はこのタイトルを付けたのが南場さんだと思ってるのかな?」と思ったわけです。
ブログだけでなく、Amazonのレビューなどでも、たまにタイトルが良くないとして著者を批判している人を見かけます。とくに多いのが、「内容と乖離しすぎだろ」という主旨のネガティブコメントですね。具体例を探してみたんだけど見つからなかったので引用しないけども、なんか最近よく目につきます。
でも、タイトルは著者は決められません。
本は売れ行きの7〜8割をタイトルと装丁が決めるといわれています。つまり、それだけタイトルは重要だってことです。
それほど重要な要素を、制作費を負担し、大量の在庫を抱えるリスクをしょっている出版社が、本づくりの素人に任せるわけないです。もちろん、意見くらいは聞くかもしれませんが、最終判断は出版社側がします。
同じ理由で装丁も著者が決めることはできません。
だから、タイトルが悪いからといって著者を責めるのは、ちょっと違うんですね。批判されている本人からしたら、「いや、タイトル決めたの俺じゃないし・・・」と思っているに違いないです。
2.原稿は著者が執筆している。
読者がしている大きな違いの2つめはこれ。
以下の記事に書いたことのくり返しになってしまうんだけども、ノンフィクション、とくにビジネス書や自己啓発書はゴーストライター率がとても高いです。
ゴーストライターはいるし、多くの本は彼らが書いている。 - 人生をコンテンツ化する。
1冊1冊の本を調べることは不可能だから正確な数字はわからないけど、経験と知識をもとに判断するに、現在のビジネス書・自己啓発書は約6〜7割がゴーストライターによって書かれていると思います。
そういった本づくりの裏側を知っていると、著者の文章が好きなんですとか、文章力のある著者ですねとか、そういったことを書いているブログやAmazonレビューの書き手にホントのところを伝えたくてしょうがなくなってしまいます。
ゴーストライターというのは聞こえは悪いですが、あくまでより良い本を作ろうとした結果、出版社が用いている手段の一つです。批判もあるし、私も全面的に賛成というわけではありませんが、いい面もあるので作る本によって使い分けています。
詳しくは上記の過去エントリーをご覧下さい。
とまあ、以上のような誤解をされている方が結構いるのではないでしょうか?
何を隠そう私自身もこの業界に入るまでは、タイトルは著者が決めていて、ゴーストライターなんて都市伝説だと思っていたくらいです。
別にどうでもいいといえばどうでもいいのですが、せっかくなのでこれを機会に本づくりに興味を持ってもらえるとうれしいですね。